以下の文章は「自立生活の基本理念とその歴史」~ピアカウンセリング・自立生活プログラム~ 推進協会マニュアルより引用しました。
世界の自立生活センターの歴史 (同誌第1章第1節より引用しました。)
1960年代、米国において黒人の公民権運動が激しく荒れた時代、障がい者もマイノリティの一部として 同じ公民権法の適用を望んでいた。米国の障がい者運動は以降、公民権法の影響を強く受けることになる。
1972年、カリフォルニア大学バークレー校を、呼吸器付きの車いすに乗ったポリオの障がい者エド・ロバーツ(Ed Roberts)が 卒業しようとしていた。キャンパス内で得られた介助や住宅、車いす修理、ピア・カウンセリングなどの
サービスが使えなくなることから同じ障がいをもつ仲間と話し合い、家族や友人の協力も得て、地域の中に 自立生活センター(Center for Independent
Living以下 ILセンターと略す)を作ることになった。 これが自立生活運動の創始である。
米国以外では、現実は理想とは逆の方向に進み、オランダでは障がい者のコロニー政策がとられ 大規模施設群ヘッドドルフが建設される。イギリスでは、介助者付き集合住宅が作られ障がい者の集合住
という方策が採られる。米国の自立生活運動とスウェーデンのフォーカスハウス(一般住宅への分散居住) を除いて、世界はまだ施設か集合住宅の域を出ていなかった。
彼らが掲げた思想は、次の4つのものである。
① 障がい者は「施設収容」ではなく「地域」で生活すべきである。
② 障がい者は。治療を受けるべき患者でもないし、保護される子供でも、崇拝されるべき神でもない。
③ 障がい者は援助を管理すべき立場にある。
④ 障がい者は、「障がい」そのものよりも社会の「偏見」の犠牲者になっている。
これまで障がい者は、リハビリテーションという名のもとに、健常者にできるだけ近づくことを 一生の目的として課せられてきた。例えば衣服の着脱に2時間かけても他人の手を借りずにすることが
リハビリテーションでは評価されたが、自立生活の思想においては、自らの意思によって選択し、 決定することが重要であることが高らかに宣言されている。リハビリテーションは期間を限った
医療行為であり、障がい者の生活を一生管理すべきものではない。
バークレーILセンターの後を追って、同年(1972)ヒューストン、74年ボストンと急速に発展した。 特に全米の障がい者たちが一丸となって闘い勝ち取った、1978年のリハビリテーション法の改正によって、
連邦政府の援助が受けられるようになった。
また、米国の若手の社会学者Gerben DejongがThe Movement for Independent Living(1979)を発表し、
リハビリテーションとの対比でILセンターの有効性を学問的・理論的に位置づけた。
この2つの出来事によって、ILセンターは燎原の火のごとく全米各地に広がった。 カナダにおいては1980年より、オンタリオ州キッチナーでHenri
Ennsが、保護と管理を障がい者に強いてくる 「リハビリテーションからの脱却」をめざして、地道な草の根的障がい者の組織化を始めている。 この時代、世界的な状況は「自立」へと向かっていたのである。
この30年間にILセンターが達成してきた成果は偉大である。米国においては1978年いち早く リハビリテーション法504号法案を強烈な運動の結果勝ち取り、ILセンターを国に認めさせた。
そして1990年世界で初めての障がい者差別撤廃法ADA法を提案し成立させた。現在は政権の中枢に 多くの障がい者リーダーが参加し、まさにくにを動かし始めている。また国のメディケアの介助サービスの
委託を受けるILセンターが増えてきている。カナダでは1980年のDPIの成立後ILセンターが生まれ、1989年 に自己管理介助料直接支給法(セルフマネジメント・ダイレクトファンディング)を各州で成立させている。
イギリスではコミュニティケア法の中に介助料直接支給法(ダイレクトペイメント)を作らせ、 ILセンターがその地方自治体への普及事業を国に委託されている。スウェーデンで当事者アセスメント
による自己管理型の介助サービスが介助利用者協働組合の支援によって行われてきて、既に14年になる。
1999年9月21~25日、ワシントンD.C.で世界50カ国からの障がい者のリーダー100人以上を集めて、 歴史上初めての自立生活運動の世界会議が開催された。
ILセンターの世界連合がついに完成したのである。
註1)筆者:アメリカの自立生活運動に学ぶ、八代英太・富安芳和(編):障がいをもつアメリカ人法ーADAの衝撃 p.320-322、学苑社
自立生活センター・立川
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